筑波山の水脈を守る会

本会は、筑波山の水脈を保全する活動を行っています

水脈はなぜ守らなくてはいけないのか

環境省の提出した平成22年版 図で見る環境・循環型社会・生物多様性白書は以下のように記しています。

「青い惑星」といわれる地球は、約14億km3とされる水によって表面の70%が覆われています。そのうち、97.5%は塩水で、淡水は残りの2.5%にすぎません。しかも、淡水のおおよそ70%が氷河・氷山として固定されており、残りの30%のほとんどは土中の水分あるいは地下深くの帯水層の地下水となっています。そのため、人間が利用しやすい河川や湖沼に存在する地表水は淡水のうち約0.4%です。

f:id:tsukubanomizu:20181004004808g:plain

 これはいったいどういうことなのでしょうか。

筑波山南麓には、逆川、又治沢、男女川といった急峻な渓流が流れており、山裾の集落には無数の水路が張り巡らされています。こういった目に見える地表水の何十倍もの膨大な水が、地下水脈となって筑波山塊を毛細血管のように巡っているという事です。しかもこの地下水は地表水と分断されて流れているのではなく、一体のものとしてつながっています。一つの小川、ため池の地下には水が集まってきており、その水が空気を含みながら地表と地下を行き来しているのです。

問題は、現代の治山治水が地表の水や土砂の処理のみを考え、地下水脈の存在を忘れていることです。U字溝や河川の三面張り、砂防ダムといったコンクリート構築物は、地下と地表の水の行き来を分断し、本来川へと湧き出るべき水は行き場を失い、地中に停滞し腐敗します。土壌内には酸素が欠乏し、青灰色をした命を育まないグライ層が生まれ、有機ガスが地中に充満するようになります。この腐敗した有機ガスは地下水脈をたどって地中を逆流し、筑波山上部の原生林に緩慢な、しかし着実な影響を与えていきます。(参考資料:file.5「風土を再生する〜里山整備の視点」:森林ボランティア:森へ行こう!|私の森.jp 〜森と暮らしと心をつなぐ〜

ひとたび大雨が降れば、水脈の要所をコンクリートによって塞がれた山は、地下水を十分に排水することができません。山裾から尾根へ向かって、まるで水柱が伸びていくように、地下では大量の水が蓄えられていきます。石をも浮かす地下水の圧に耐えきれなくなった斜面は崩壊し、土石流となって集落を襲う事となります。筑波山南麓は、広範囲にわたって土砂災害警戒区域に指定されています。生産性重視の現代的価値観とは相いれないかもしれませんが、水脈の保全は山に住む人々の宿命と言えます。

www.youtube.com縄文の世より人が住まい、歌い、祈った、命育む豊かな筑波山筑波山の貴重な原生林を守るために、そして何よりも山麓の住民の安らかな暮らしを守るために、本会は、筑波山の水脈の保全に取り組んでいきます。