9月の活動(「山のスクール」/講師:今西友起さん)のご報告と10月の活動のお誘い
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10月の活動のお誘いです。
作業内容は、竹炭焼き+階段作りになります。雨天の場合は、山へ入ってメンテナンスになります。(雨の日は雨の日で、水の流れが見えるので水脈整備に適しています)
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日時:10月19日(土)
集合場所:立野集落(六所の隣です)
駐車場:六所皇大神宮第二駐車場(自転車の方は直接集合場所で結構です)
時間:9時集合~お昼ご飯後、随時解散(午後は有志で作業を行います)
*疲れすぎない程度に体を動かしましょう。水分はきちんと取りましょう。
*お昼ご飯を食べる方は、おひとり300円(未就学児100円)カンパをお願いします。お昼ご飯は、おにぎりと鶏汁です。
*野良仕事の服装でいらしてください。帽子・長袖・長ズボン・タオル・軍手・長靴・リュックか腰袋・着替え・虫よけスプレー・虫刺されの薬 等 黒い服装はお控えください。
・持ち物:飲み物入りの水筒・ノコ鎌・移植ゴテ
(昼食を一緒に召し上がる場合)お皿・お椀・お箸・コップなど
*参加ご希望の方は、tsukubanomizu@gmail.comに、ご昼食の有・無もお伝えください。
《初めて参加される方へお伝えしたいこと》
私たちの活動は、自然保護を第一の目的としたものではなく、山を真ん中とした、人と人、里と街とのつながりを再生することを一番大切にしています。山仕事には危険がつきものですが、ボランティア保険はかけず、「自己責任」という言葉も使わず、お互いを思いやりあって活動をしていきたいと思います。小さなお子さんやご老人も参加されますが、誰も怪我をすることなく、無事に家に帰ることが出来るよう、優しい気持ちで祈りながら、同じ時間を過ごしていければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
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9月の守る会の活動は、様々な意味で、大きな飛躍の回となりました。
常陽リビングさん、NEWSつくばさんの報道を受けて、守る会の情報が、活動開始から9カ月目にして、ようやくこの山を愛してやまない不特定の層に届き始めたのです。これは感動的なことです。筑波山は小さな山です。姿かたち、眺望は無二ですが、山は荒れ果て、深山の景も無く、ヒールでも登山できてしまうようなお手軽な山です。しかしその歴史の古さと、人々からの崇敬の篤さゆえに、日本百名山に加えられました。参加者は、私達コアメンバーを含めて20名近く。イベント(急遽山のスクールというイベントの開催となりましたが)でもない、通常の活動にこれだけの参加者が来てくださるという事、信じられません。筑波山の見えるところで人生を過ごしてこられた皆さん、言葉に表せぬ筑波山への愛をそれぞれにお持ちでした。私などより、その愛は深い。と感じました。
私のしていることは、ただのきっかけづくり。この小さな山が一身に受けるとてつもない愛の総量、想像することもできません。これがひとたび一つの方向へと放射され始めたとしたら、アマチュアである私の役割はもう終わるのかもしれません。様子見の方もいらっしゃるでしょうし、毎回来ていただけるわけではないにせよ、今後も来てくださる一人一人の方を大切にして、共に活動を続けていただければと思っています。皆さまには重ねて御礼申し上げます。辛いこともありますが、大きな励ましとなりました。事務局としてはまだまだ未熟な私、どうぞ色々とご教示くださいね。
そんな嬉しい出来事に加えて、今回はなんと急遽、環境改善のプロフェッショナル、今西友起さんを三重から招聘し、山のスクールを開催することが出来ました!今西さんは、山の環境改善に関しては日本で三本の指に入る方で、高田宏臣さんも全面的な信頼を寄せていらっしゃり、一緒にお仕事をされています。今西さんは、三重にお住まいにもかかわらず、1月の高田さんの講演にいらっしゃっていた(高田さんの名声はすごい!)そうで、その後も私のブログを読み、ひそかに山麓の弱小な活動を応援してくださっていたのです(ありがとうございます…)。ただ、技術の無い私が間違ったことを仕出かしているのを心配し、7月のダーチャで、思想に裏打ちされた技術を持つことの大切さを一所懸命教えてくださったのでした。そのご縁で、8月に新潟で集中講座を受け、これは守る会のメンバーにも伝えなくてはいけない!ということで、無理を言って「山のスクール」を開催していただいたのです。
今西さんはもともと土建会社にお勤めだった方で、土木の豊かな経験をお持ちです。砂防ダムを始め、多くのコンクリート構造物を建造されてきました。しかし、ふと書店で手に取った雑誌に掲載されていた高田さんの記事を読まれて、誇りをもってたずさわってきたご自身のお仕事が、環境に致命的なダメージを与えていることに気が付き、このままではお子さんに顔向けできないと、悩んだ末に会社をやめられました。現在は独立され、フリーランスとして庭や山の環境改善、石場立ての施工などを請け負い、自然と調和した土木の在り方を追求されています。その追随を許さぬ技術と思想については、私が言葉にするよりも、ビデオを直接ご覧になっていただくのが一番かと存じます。Youtubeにアップしておきましたので、お時間があれば、ぜひ。
それにしても、宮山の東の沢で、あ!と息つく暇もない瞬間的な技で水を通してしまうわ、西の谷筋では、10分くらいバールでつつきまわしただけで、4、5か所から水を沸かせてしまうわ、とんでも無い方だと思いました。スコップの使い方ひとつ、草の刈り方ひとつにも、大切な要素がたくさんあるわけで、とても一つ一つの技術をものにするところまでは行きませんでしたが、今西さんという存在は皆の胸に焼き付いたはずで、その思想は胸の奥深いところまで届いたのではないかと思います。
実は今回、ショックなことがありました。ブログで書いていいのか、どうか、悩みました。利己的ではありますが、この土地に住む私、という立場からのことです。でも、書かなくてはなりません。今西さんと二人で、現場の下見のために、宮山の西の谷筋から、やや深い谷間にそって磐座まで登ったのですが、宮山の西の尾根付近に、茨が生えていたのです…。今西さんによれば、山が緊急事態にある時、茨が生えるのだそうです。何人たりとも、獣すら足を踏み入れてはならない時に。(山の土壌とは、一つの生命体です)東の谷筋には砂防ダムがあるので一見こちらの方が荒れて見えますが、実際は、西の谷筋のメンテナンスの方が急がれるのです。今西さんは、ここ(西の尾根筋)はWS形式でやってはいけない。プロが慎重に、それこそ仕事としてではなく、ボランティアとして、時間を度外視してやっていくほどの場所だ、とおっしゃっていました。
なぜそこまで悪化したのか。それは、西の谷筋がもともと棚田であり、谷筋に沿って小さな平地(平地は地形的に水が停滞しやすい)が連続し、粘土質の土壌が形成されているからです。これが田んぼとして機能しているなら、問題は起こらない。でも、現在は植林され、放置されています。もともとあった沢も、斜面崩壊で埋まっており、山は呼吸ができていない。窒息寸前です。溝を掘った私は確認しました。宮山西の斜面の谷の下に、岩盤がむき出しになっている場所があります。本来、水が豊富に湧き出すような場所です。ここには分厚いグライ層が広がっており、リリーを連れてちょくちょくメンテナンスに行っていますが、素人の私が溝を掘ってもなかなか消えないのです。その影響が、谷上部、西側の尾根筋付近に現れ始めているのです。谷の機能が劣化したとき、尾根はまっさきに痛んでいきます。これに気が付かず放置すれば、そして、普段は降水量が少ない田井の里に、気候変動のために大雨が降るようなことがあれば、どのようなことが起こるのか。六所の湧き水も止まっています。脅すようなことは言いたくない。でも、これが現実です。
山は様々なシグナルを送っています。だけど、絶望をすることはありません。私たちは、事が起こる前に気が付いた。そして西の谷筋の改善は、確実に尾根付近の環境の改善につながっています。水脈保全は、下からやるのが基本だからです。山は自浄作用がありますから、最初のインパクトさえ、正確に与えればよい。それを導ける方々、高田さん、今西さんが、守る会に関わってくださっている。そして、筑波山水脈における最大の要、宮山の改善が、確実に、筑波山の山頂にいたるまで、筑波山全体の改善へとつながっていくんです。
里の人にこの問題を解決する気力、体力、余力は、もはやありません。田畑、広い屋敷を維持するだけで、ぎりぎりなのです。里の人はもう十二分に、頑張ってきたんです。社会から、やっていることの価値も理解されず、感謝も受けることなく、それでも歯を食いしばって頑張ってきました。今こそ、筑波山を愛してやまない街の皆さんの利他の愛と力が必要です。屋敷の濁った池(これも水脈の要)。放置竹林。遅れた山林の間伐。荒れた山道の再生。やらなくてはいけないこと、いっぱいあります。街の皆さん、皆で里の人に恩返しをしていきませんか。筑波山水脈(筑波山の水は、埼玉県の熊谷まで到達しています)の重要性を考えれば、この小さな田井の里―それも六所―の環境こそが、関東平野の広大な領域にインパクトを与える程のものだということ、これが真実です。(これは本当に単純な、物理学的な話です。すべては連鎖するのです。それだけの話です。)そこに、古代からの天照大神信仰が現代に至るまで脈々と続いており、かつては東国のお伊勢様として篤い崇敬を集めていたのです。古代の人々は、この場所の重要性を正確に理解していたのです。なぜ、裳羽服津というただならぬ古名がこの地に残されるのか。歴史学研究者として、このことに、私はただただ畏怖を感じるのです。
最後に、今西さんからの言葉で、心に残ったものを。
「山に入るときは、入らせていただく。木を切るときは、切らせていただく、という気持ちで。」
「どうせ山に入るなら、山にとってプラスになることをして帰ってくるように。」
「現状に絶望をしないこと。」
今西さん、遠いところからお越しいただき、本当にありがとうございました。今後ともどうぞお導き下さい。