筑波山の水脈を守る会

本会は、筑波山の水脈を保全する活動を行っています

再訪・地球守/土気ダーチャ

地球守とは、私達を導いてくださっている造園家、高田宏臣さんの主宰されているNPOであり、土気ダーチャとは、千葉にある小さな地球守のフィールドです。土気ダーチャに家族で訪れたのは昨年の4月のことですが、先日、久方ぶりに再訪いたしました。

高田さんにはたいへんなご迷惑をおかけし、お世話になっているとは言え、実は、個人的にじっくりとお話をさせていただいた事は殆どなく、今回ははじめて、お酒も入りながらのざっくばらんなお話ができ、真摯でありながらも、どこまでもおおらかな高田さんのお人柄に、改めて敬愛の念でいっぱいになりました。そして、私達がどのような者達であり、何を腹に抱えているのか、正確なところはご存知ないにもかかわらず、直感で信じてくださり、このようなご高名な方が、惜しみなく力を貸してくださり続けていることに、稀有なことであると―しかしそれはとにかく、「筑波山であるから。」「ここだから。」ということに尽きると思います(それを有難いことに、高田さんは、あなただから、という言葉で、勇気付けてくださいます)―、改めて感謝の気持ちでいっぱいであることを、この場をお借りしてお伝えしたいと思います。

土気ダーチャとはどのような場所であるのか。豊かな下総の地では、幸運なことにどこにでもあるような、いたって平凡な、しかし太古から最も多くの命を育んできた、地力の強い小さな崖、「はけ」にあります。「はけ」という言葉を聞いて思い出すのは、高校生の頃になぜか夢中になった、大岡正平の『武蔵野夫人』の冒頭です。大岡正平は、第二次世界大戦の激戦地の帰還兵でありましたが、命を守るために身につけなくてはならなかった冷徹な目で、地形を正確に記述しました。「はけ」とは、命の源でした。縄文遺跡の多くが、このような地形の上に遺されると言います。「はけ」は、小さな地形落差であるにもかかわらず、清らかな水をこんこんと湧き出す力を持っています。しかし土気ダーチャの「はけ」は、アズマネザサの繁茂する不法投棄の現場でした。それを、震災後の高田さんは思うところおありになり、私財をなげうって再生されました。そのことに私は、心の震えるものを感じるのです。どれだけの自然派と言われる人が、震災後、遠い場所へと居住地を移したことか。責めることはできません。でも、私達はここに留まり続け、汚したものを浄化していかなくてはいけない。その決意、お心が、伝わってくるのです。技術もさることながら、何よりもそのような高田さんの思想に、私達も含め、多くの方が惹かれ続けるのでしょう。

地球守のダーチャは、WS開催の際にどなたでも見学することが出来ます。どうか皆さま、機会がありましたら一度行かれてください。ここを見学すれば、高田さんのフィロゾフィーが、一目瞭然です。ただの芝地が、驚くほど柔らかいのです。この地は、高田さん、高田さんのお弟子さん、地球守の賛同者たちの愛を一身に受け、失われていた地力を取り戻し、谷はその地形としての本領を発揮し、枯れていた水を蘇らせました。ゴボゴボと音を立てながら、清廉な水を湧き出しています。昨年よりもさらに力を増していました。あらゆる虫、「雑草」に、病にすら、役割と意味があると言います。ならば、自然の理から離れ続ける人間の持つ本来の役割とはなんであるのか。考え続けていました。それはやはり、「牧人」としての使命を課せられているのだろうと思います。高田さんは、人が住むことによって、その土地はさらに力を高めることができるとおっしゃっていました。高田さんに「牧人」としての所作を教えていただきながら、山を舞う様に歩けるようになれればと、願っています。

今年の筑波山南麓はとても変です。小さな頃から、盆と正月には一人で野山を駆け巡っていた私の直感的なものです。気候の変動というレベルではなく、何かが根本的におかしな気がするのです。昨年まではこうではありませんでした。これは私だけの感覚なのでしょうか。皆さんのフィールドではいかがでしょうか。

 

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今週の土曜日は筑波山の水脈を守る会の活動日です。お近くにお住まいの方、どうぞお気軽にご参加ください!